スキューモーフィズムの再来
かつてのトレンドである「スキューモーフィズム」が再び注目されています。
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最近、画像生成AIの技術が進歩し、創造的な成果物を得ることが可能になってきました。業務においても活用が期待されますが、生成物の品質や著作権の問題など、課題も存在します。この記事では、画像生成AIのサービスの概要と、その利用における著作権に関する重要な考慮事項を紹介します。
短時間でのローカルでの実行には、高価なGPUが必要になるため、サービスとして提供されているものを取り上げます。
今回の紹介では、テキストによる画像生成(Text to Image)のみを扱いますが、生成AIにはテキスト生成、音声生成、動画生成などもあります。
まずは2024年現在の代表的な画像生成AIサービスをご紹介します。
Adobe Fireflyは、Adobe社が開発した画像生成AIで、Adobe Creative CloudのPhotoshopやIllustratorなどのアプリ内で利用可能です。また、Webサイト上でも利用が可能です。
DALL•EはOpenAI社が開発した画像生成AIで、ChatGPT上で利用できるのが特徴です。AIと対話しながら生成物の品質を改善することが可能であり、APIも提供されています。これにより、自身のプログラムに画像生成AI機能を追加することができます。
Bing Image Creatorは、Microsoft社が提供するAI画像生成ツールで、Microsoft Edgeや、Copilotから直接DALL•Eを利用して画像生成が可能です。
Midjourneyは、Midjourney社が提供しており、Discord(ディスコード)というアプリ上で、チャット形式で操作して利用します。環境を構築することで、ローカルで実行することが可能です。
Stable Diffusionは、Stability AI社が提供しているAPIで、誰でもモデルをダウンロードし、環境を構築することで、ローカルで実行することが可能です。
画像生成AIを利用する際は、生成物が著作権を侵害していないか注意が必要です。各サービスを利用する際には、以下の2つの観点で権利侵害の可能性を判断する必要があります。
AIの学習リソースとして著作物を利用することは、日本では合法です。
画像生成AIによって出力された生成物のスタイルの近似は著作権侵害の対象とはなりませんが、全く同じ構図やパターンの出力については侵害の可能性があります。
日本ではAIによって直接生成された作品自体は著作権の対象とはなりませんが、人間が仕上げた場合は著作権が発生します。
海外では生成物に対する著作権の扱いが異なるため、公開範囲によっては異なる可能性があります。下記に事例を紹介します。
アメリカでの事例です。Thaler氏は作品をAIシステムを著作者として特定したうえで、自身を著作権請求者として記載し申請を行いました。この申請に対し著作権局は、「人間の創作性が著作権には必須」という見解のもと、その作品が人間の著作者性を欠いているとして、Thaler氏の申請を却下しました。
中国での事例です。原告はプロンプトを入力する方法で画像を生成し、SNSに公開しました。この画像が署名を取り除かれた状態で別のメディアで公開されているのを発見し訴訟を起こしました。原告は、AIモデルの選択、指示語と反対指示語の入力、パラメーターの設定の3つを理由に創作的寄与を主張し、裁判所は、原告が生成した画像の著作権を有するとの判決を下しました。
各画像生成AIサービスを商用利用する際には、生成物が著作権を侵害していないことを確認する必要があります。
Adobe Fireflyはオープンライセンスまたは許可取得済みの素材を学習元として使用しています。しかし、Adobe Firefly以外のサービスでは学習元の著作者との関係が不明確であり、第3者の著作物が生成物に含まれている可能性がある場合は、当事者間で調整することが必要です。
"某黄色のネズミ風のゲームキャラクター名"をプロンプトとして入力した場合の各生成AIサービスによる生成物を比較し、学習元によって生成物が著作権侵害をしてしまう例を示します。
上記の例から分かるように、Adobe Fireflyは既存の著作物からかけ離れた画像を生成しています。直接的な指示がなくても、第三者の著作物が紛れ込むことを防ぐようになっています。これは各サービスごとの学習元による生成物への影響がわかりやすい例です。
Adobe Firefly、DALL•E、Bing Image Creatorでは、プロンプトによる生成物について権利侵害や表現に問題がないかサービス側で検閲を行っています。そのため、プロンプト内に秘密情報が含まれる場合は、利用の際には注意が必要です。
一方で、MidjourneyやStable Diffusionなどは、環境を構築することでローカルで実行することができます。第三者のサービスを利用できない場合は、これらのローカル利用可能なモデルの利用が考えられます。ただし、学習ソースに問題が指摘されていることから、今後はAdobeやOpen AI系(DALL•E、Bing Image Creator)との利用可能範囲の差が広がっていく可能性があります。
上記のように学習元が明確であるため、Adobe Fireflyが商用利用には最も適しています。また、2023年6月に発表されたエンタープライズ版では、権利侵害の場合の補償が対象となっています。
Adobe Fireflyは、安全に商業利用できるように設計されており、Fireflyによるワークフローで生成したコンテンツによってはアドビから知的財産(IP)の補償を受けることができるため、企業は安心して本ソリューションを組織全体に導入することができます。
アドビ基本利用条件の「4.お客様のコンテンツ」追加の「Adobe生成AI追加条件」では以下のように記載があり、それぞれ下記に引用します。
4.3所有権 お客様とアドビの間において、お客様は(ビジネスユーザーまたは個人ユーザーとして)お客様の本コンテンツについてすべての権利と所有権を保持します(または適宜、お客様または法人(該当する方)がコンテンツの有効なライセンスを有するよう確保する必要があります)。お客様の本コンテンツに対して、アドビはいかなる所有権も主張しません。
- 引用:
- アドビプライバシーポリシー
お客様の責任 アウトプットの作成と使用、およびアウトプットが本条件に準拠していることの確保については、お客様が単独で責任を負います。ただし、アドビは、アウトプットがお客様に提供 される前に、適用法、第三者の権利、または本条件に違反する可能性のあるアウトプットについてスクリーニングやブロックを行うために、利用可能なテクノロジー、ベンダーやプロセスを使用することがあります。アドビは、アウトプットが第三者の権利または適用法を侵害しないという暗黙の保証を含めて、アウトプットに関するあらゆる明示的または黙示的な保証を否認します。
- 引用:
- Adobe生成AI追加条件
画像生成AIの用途としては、主に背景画像やアイキャッチ画像などの生成が一般的ですが、UXデザインにおいては、ペルソナやストーリーボードの作成にも画像生成AIを活用することが考えられます。今回はAdobe Fireflyの「テキストからの画像生成」機能を用いて、小学校の教室で授業中に使用するデジタルホワイトボードアプリ向けにペルソナとストーリーボードを作成しました。
最初にChatGPTを使用してペルソナを生成しました。
これを踏まえて、以下のプロンプトで画像を生成しました。
ChatGPTでストーリーボードを生成したところ、以下の3つのシーンが生成されました。これらのシーンを元に、さらに詳細な利用場面をイメージするプロンプトを入力し、それぞれの画像を生成しました。
アプリの利用環境やデバイス、ユーザの利用している様子を描画することで、ユーザの利用状況を具体的にストーリーボードとして共有することができました。一方で、アプリ内のUIの描画や具体的な操作シーンを指定して描画することは難しく、アプリの特性を詳細に表現することはできませんでした。
画像生成AIの生成物の課題と、著作権への課題を踏まえて、実際に業務に使用するにあたって次の点を考慮する必要があります。
画像生成AIの進化は未来のクリエイティブ業界を変革する可能性を秘めていますが、現在の業務においては慎重に取り扱うべきです。もしプロジェクト内で活用を検討する場合は、弊社では本記事での注意点を踏まえて事前にお客さまと合意した範囲で活用致します。
ガイドラインの変更などがあり得るため、各サービスを実際に利用する際には情報を再確認してください。